Archive for May, 2008

子供美術3

Saturday, May 31st, 2008

今回はデザイン的な作品に挑戦しました。

 

下書きとして、ランダムに縦に12本、横に10本の線を画用紙に描きますと、合計143個のマス目ができます。

次に持っている絵具から暖色と寒色に分けて、どちらか好きな方から3色の絵具と、もう一方から1色の絵具を選びます。

 

まず最初に、もう一方から選んだ1色の絵具を143マスの内の5マスだけに塗ります。それをどこに塗るかは本人ではなく友達が適当に決めます。

 

次に残りの138マスを最初に選んだ3色の絵具で塗りますが、一つルールを作りました。それは上下左右に同じ色を続けて塗ってはいけないというルールです。

 

そのルールに従って作業をどんどん進めていきますと、最終的に塗ることのできないマスが何個か出来てしまいます。

その塗ることの出来なかったマスは、これまでに使っていない絵具の中から自分で好きな色を1つ選んで塗ります。

それで作品が完成とします。

 

この作品は自分の感覚(感性)、と簡単なルールを決めることで自分ではコントロールできない偶然性の2要素を取り入ることができます。

そうすることで最後まで完成がどの様になるかわからないという楽しさと、自分のイメージを超えるモノが出来るかもしれないという期待感があります。

 

2人とも寒色系の色から3色選んだので青緑系の作品になりましたが、出来上がった作品は各々個性がはっきり出ています。

どちらの作品も寒色系の作品ですが暖かみを感じる作品です。

ちょうど今の時期に見ることができる木々や草花など、新緑の色のように感じました。

 

上の作品 タイトル「色さまざま」

使用絵具 サクラカラー(アクリル絵具)

最初に選んだ3色→フタロシアニンブルー、ウルトラマリンブルー、イエローグリーン

もう一方から選んだ1色→レモンイエロー

最後に選んだい色→フタロシアニングリーン

 

フタロシアニンブルーとウルトラマリンブルーは色の違いが微妙なのですが、その違いをはっきり認識できていました。

マス目の角の塗り残しがないようにと、最後に細かくタッチアップしていました。ちょっとしたこだわりが作品の出来栄えに影響します。

 

下の作品 タイトル「緑の十字路(グリーン クロスロード)」

使用絵具 リキテックス(アクリル絵具)

最初に選んだ3色→フタロシアニングリーン、パーマネントグリーンライト、フタロシアニンブルー

もう一方から選んだ1色→イエローミディアム アゾ

最後に選んだい色→ラメ オレンジクリスタル

 

こちらはフタロシアニングリーンとパーマネントグリーンライトがこれまた微妙な色の違いなのですが、その違いをはっきり認識できていました。

始めに絵具を水で研いで、塗りやすい状態の絵具を作ってから色を塗っていました。絵具を上手に使っていました。

ニューヨーク生活18

Thursday, May 29th, 2008

 

美術学校の建物の並びにスーパーマーケットがありましたが、僕は休憩時間になるとコーヒーなどをよく買いに行っていました。

 

こちらでは自分で好きなサイズのカップを選んで、それにコーヒーを入れ、レジに持って行きます。

ついでにレジの横によく置いてあります、バカ甘いスニッカーズ(snickers)というチョコレート菓子を買ったりするのですが、その日はコーヒーと、その他にバナナを一本を掴んでレジへと向かったのです。

 

コーヒーとバナナをレジに置くと、キャッシャーの女の子がそれを見て、「この組み合わせはよくないわ! 私、今朝コーヒーとバナナを食べてお腹を壊したばかりなの!」などと親切に忠告してくれるのです。

なるほど、 この組み合わせがベストマッチだと思う人は少数派であろう。実のところ僕自身も微妙な組み合わせだとは思います。しかしこの時はバナナも食べたいし、コーヒーも飲みたい気分だったのでした。

僕は今までの経験から、この組み合わせでお腹を壊した記憶がないので、この親切な彼女からの忠告をありがたく聞きながら自分は大丈夫であることを彼女に伝えてお店を後にしたのでした。

 

結局のところ、僕はその後お腹を壊すこともなく、無事に過ごせたのですが、こちらでは本当に知らない人からよく声をかけられます。

 

よくあるパターンが、スーパーマーケットなどで僕は背が高い方なので背の低いおばさんから棚の上の物を取ってほしいとよく頼まれます。

それから知らないおばさんが僕の目の前に大きなお皿を二つ見せて、「あなた、どっちが良いと思う?」なんていきなり聞かれたこともありました。

日本だったら”はっ”みたいに目が点になるでしょうけど、こちらで生活していると、ありえないでもないシチュエーションなので、「僕はこっちがいいと思うけど。」みたいに自然と答えている自分だったりするのですが。

 

それはスーパーマーケットに限ったことではありません。

道を歩いていても、バス、地下鉄、エレベーター、あらゆる所で知らない人と会話する可能性があります。

 

それが日本だったらどうでしょう。

例えば一人で渋谷に行くとしましょうか。あんなに人が沢山いますけれど、はたして行き帰りの道中で知らない人と会話する可能性はあるでしょうか。

人によると思いますが、僕だったら限りなく無に等しいと思います。

 

お国柄の違いでしょうか。

日本人はシャイだからとか、よく言われますが、若い人達を見ていると最近そうでもないと思いますけどね。

 

まあ、いろんな要因はあるでしょう。ただ、結局何を言いたいかと申しますと、話がどんどん横にそれていきそうなので端的に言いますが、名前もしらないレジの女の子と些細な会話をしただけでも、この日本人でシャイな男としてはそれはそれはとても印象的な出来事な訳で、それもバナナとコーヒーの組み合わせについてのお話ですからね。

 

ちょっと文章にしてみたかったのです。ハァ…..

 

今でもこのバナナとコーヒーの組み合わせを見るたびに、彼女の台詞が頭をよぎります。

つづく

ニューヨーク生活17

Tuesday, May 27th, 2008

ある日こと、ストリートでアメリカ人の老夫婦が僕の絵を3枚も買ってくれました。

僕の場合、年老いた方が絵を買ってくれるということは非常に珍しいことなのです。

 

実は、その奥さんの方は何週間も前から毎週のように僕の作品を見に足繁く通っていたのでした。

いつもこっそり遠目から眼光鋭くじっとこちらを見ているのです。

僕としては非常に気になるわけで、しばらく様子を見てから声を掛けますと、少し笑って照れくさそうにすぐに去っていくのです。 

そんなことが何度か繰り返されましたが、ある日ついに初めて旦那さんを伴って来てくれたのでした。 

奥さんは僕を見て、「今日は買いに来ましたよ。」と言わんばかりに目で合図を送ってきました。

 

僕はそのシグナルをしっかり受け止めて、彼らの邪魔をしないようにその場から少し離れて様子を見守っていました。

彼らは作品を何枚か手に取っては並べて見たり、少し距離をとってまた見たりと、とても熱心にかなりの時間をかけて真剣に吟味していました。

しばらくしてお互い納得したのか、その中から3枚の絵を選んだのでした。その3枚の組み合わせは実に”Good choice”と言えるものでした。

 

僕が代金を受け取る時に奥さんが、「私、よくここに見に来ていたのよ。」と初めて奥さんから僕に声をかけてくれたのでした。

それで僕が「知っていますよ。」と答えると、奥さんは照れくさそうに笑っていました。 

 

とても控えめな印象の夫婦でしたが、どんなモノでも買う前によく吟味し、自分たちが本当に気に入った物しか絶対に買わないし、家に置きたくないという、売る側からしてみればとても手強いお客さんのようです。 

僕はそういう人達のお眼鏡にかなったようで、たいへん光栄であります。

 

帰り際、近い将来ニューヨークで個展をすることを約束し、固い握手をかわしてその老夫婦と別れました。

つづく

子供美術2

Saturday, May 24th, 2008

 

今回は無色透明な物を観察して描くことがテーマです。

 

題材はガラスのコップとカラフルな色のハンカチです。

 

よく観察することで、ガラスに映り込んだ色や形などを見つけ出すことも大事ですが、全体をぼーっと眺めて見ると逆におもしろい形や色が見えてくると思います。

 

上の写真 タイトル「光衣(ライトグリーン)

バランスよくコップを画面の中に入れることができたので力強い画面になりました。

ガラスに映り込む形をよく観察できています。

鮮やかな緑色です。ポイントの赤色が効いています。

 

下の写真 タイトル「ハンカチとコップ」

微妙な色の変化やおもしろい形を見つけ出すことができています。

何度も画面を乾かしては色を重ねるという作業をしていますので、画面を濁すことなく、淡い色合いの中に深みを感じます。

ニューヨーク生活16

Thursday, May 22nd, 2008

 

毎年6月から9月までの3ヵ月は、学校がサマーバケーションで休みになります。

その間は学校に縛られることはなく、24時間全ての時間が何の拘束もなく自分の為だけに自由に使えるのでした。

 

学校好きの暇な連中、いや、しっけい。 まじめな輩はサマークラスというものを受けていましたが、もちろん強制ではないので、僕は一度もそれを受けたことがありませんでした。

僕としてはガンガン自分の作品を作りたい訳で、たとえ学校でそれが出来たとしても学校というところは何らかの制約があり、自由気ままにできる環境ではないのです。

とにかく僕の理想はいつでも、どんな時でも思い立ったらすぐに作品制作できる環境なのです。 

 

サマーバケーションの間は、ほぼ毎日スタジオで好きな音楽を聞きなが作品を制作し、たまに気分転換に本を読んだり、部屋を掃除したりしてほとんどスタジオで過ごし、気がつくと 昼と夜とが逆転した生活を送っていました。

けっしてだらだらと過ごしていたわけでなく、作品はスゴイ量を作っていました。

 

食料が底を尽くまで引きこもり状態が何日か続くのです。

もちろんそんな状態が5日以上続くことはありません。

なぜなら週末の土日は朝からストリートに出るからです。今では僕の大事な収入源となっているのです。

 

引きこもり状態というのは外界との接触がないので日付や曜日の感覚がなく、不意に夢の中というか非現実的な世界にいるのではないかと錯覚することがたまにあります。こういう時は友人からの電話もなく、心地良いのか悪いのか自分でも釈然としなかったりで、とりあえず日中は暑いので日が暮れたころ気分転換のつもりで食料品の調達を兼ねて散歩に出ます。

 

浦島太郎のごとく懐かしい世界に戻ってきたような感覚で僕は少し安堵しつつも前の世界とのギャップにどぎまぎしながら街を散策するのです。

 

ここら一帯の建造物はキャストアイアン工法で建てられた大型のレトロな建造物が立ち並び、夕暮れ時は白い壁や窓ガラスが夕日に反射して建物の陰影が際立ち、一段と美しいのです。

 

数年前の僕ならば、このシュチエーションはまさにあこがれの風景でした。ところが今はそれが日常の風景になっているのであって、なんとも不思議と言いましょうか、まるで過去の自分が未来の自分を見ているような思いです。

 

それというのも実はニューヨークに来る3年ほど前に一度、2週間ぐらいの予定でニューヨークを訪れたことがありました。

それが僕にとって初めてのニューヨークだったのですが、その時に心の底からここに住めたらどんなに素晴らしいことかと思った場所が、まさにこの場所だったのです。

今となっては過去に思ったことが現実となっているわけですが、これは偶然なのか、はたまた必然なのか、人間の”思い、想念”とは実はすごい力が働き、少なからずともそれによって未来を形成しているとも言えるのでは。

 

この散歩はお店のショーウインドウを見たり、レコード屋、本屋などに立ち寄り、少し文化的な刺激を頭に入れながら最後に食料品を買って帰るというパターンなのですが、スタジオに帰り着く頃にはすっかり日も暮れています。

 

このちょっとした散歩は、大きく深呼吸したように、新鮮な空気を体内にいっぱい入れて僕の頭をリセットするのです。

そしてまた夜な夜な、眠らない街の片隅で僕は作品作りに精を出すのでした。

つづく

新作

Monday, May 19th, 2008

 

タイトル 「Line up (Structure series) 」 No.182TA

サイズ 280mm X 260mm X 45mm

アクリル、染料、紙、ウレタン、キャンバス、パネル

子供美術1

Saturday, May 17th, 2008

 

今年の5月から毎週土曜日の夜7時から9時まで、自宅にて小学5年生と小学4年生に絵を教えることになりました。

実は20代前半に5年間ほど小学生を対象に絵を教えていたことがありましたが、またご縁がありまして再び教えることになったわけですが、はたしてどうなりますでしょうか。

 

記念すべき第一回目は、コラージュの要素を取り入れて、物を配置するバランス感覚、そして色彩の偶然性のおもしろさをテーマに作品作りをしてみました。

作品制作にはさみを使いますので、はさみで上手く切るコツなども教えます。

 

今回の作品は2週に分けての制作です。

最回は完成予想イメージ図の作成と、背景の制作、各パーツのための素材(色紙)作り。

2回目は各パーツを切り取り、貼付け。

ちょっと欲張り過ぎましたかな。

 

子供達は僕の予想を遥かに上回る素晴らしい作品を作り上げました。

 

上の写真 タイトル「海の中の魚たち」

舞台は海の中ですね。大きい魚、小さい魚、潜水している人が描かれ、画面に動きがあります。

大きい魚に食べられそうな小さな魚、釣り針に掛かりそうな魚達、沈没船など作品の中に色々なドラマがあることで見ていて飽きません。

 

下の写真 タイトル「虹宇宙(レインボー コスモ)」

舞台は宇宙ですね。背景の宇宙空間の色は奇麗なグラデーションをつけています。

定規を使って書かれた人工衛星が画面を引き締めています。

ダイナミックに各パーツが配置できていて、空間(奥行き)を感じます。

ニューヨーク生活15

Thursday, May 15th, 2008

 

ギャラリーのオーナーからすれば、わざわざニューヨークから職人を呼んでまでも、完璧な状態にこの作品を修復したいわけで、その思いたるや、かなり強いものを感じずにはいられませんでした。

 

それだけに僕らがやっているこの仕事は、そう簡単に誰か他に替えが見つかるものではなく本当に特別な仕事なのだということを再認識する訳ですが、またこのソル・ルウィットの作品がいかに高値で売れる作品なのかという事実も見えてくるのです。

そんな側面を考えてしまうとアーティストの僕としては非常に複雑な心境でこの仕事をしているのですが、とにかく作業の時は何も考えず、無心に淡々とこなしていきます。

 

初日から僕らは快調に作業を進めていました。

毎朝ホテルを9時に出発して夕方7時頃に作業を終了するという具合に無理のないペースで仕事ができていました。

そして毎日ギャラリーのオーナーからの過剰なもてなしに少なからずとも多少のプレッシャーを感じつつ、期待に応えるべく頑張ったおかげで、なんとか予定どおり終わりそうでした。

 

ジョンもとてもよく協力してくれて、おおいに我々の作業の進展に貢献したのでした。

実は彼は結婚していて、奥さんは映画女優をしているというではありませんか。

題名は忘れましたがマイケル・ダグラスの出演している映画に出たらしく、まさしく美男美女のカップルみたいです。

その映画女優の奥さんが我々のために手作りのパスタサラダなどを差し入れしてくれたり、そのお礼にこちらから花束をプレゼントしたりと短い期間に、ジョン家とのちょっとした慎ましい交流もありました。

 

作業は予定の半日を残して無事完了することができました。

作品の仕上がり具合にギャラリーのオーナーも満足そうで、こちらとしてはやっと一安心というところですかね。

空いた時間で少し観光でもしようかと思いましたが、結局ホテルの裏にあるビーチを散歩しただけにとどめました。

 

僕の心は無事に仕事を終えることができた満足感で十分満ち足りていました。

ビーチは延々と続いていて、瀬戸内海を見て育った僕としてはそれはそれは雄大な眺めでした。

すこし曇りぎみの空と、泳ぐには少し肌寒く感じる気温のせいか、人の姿が見当たらず静かで、幻想的な浜辺でした。

僕は大西洋をこんなに間近で見たのは初めてで、しばらくこの海を見ながら、この海の向こうにはアフリカ大陸があり、エメラルドグリーン色をした海で繋がっているのだと思いを馳せながら、きれいな海の色が脳裏にぼんやりと残りました。

後日、NYに帰ってからビーチの絵を描きました。(写真)

 

そうそう、せっかく買った水着はといいますと、ホテルのプールで使いました。

もっぱら夜中でしたけどね。

つづく

氏神様参り

Wednesday, May 14th, 2008

 今日は月に一度の氏神様参りをしました。

 

昨日から降っていた雨も止んで、今日は素晴らしい天気です。

空気の透明さを感じました。

 

ミャンマーのサイクロン被害、中国は四川省の大地震と アジア圏での自然災害が続いてしまいました。被災者の方々が一刻でも早く救出されることを心より願い、そしてお祈り致します。

 

そして、ポップアートの巨匠、ロバート・ラウシェンバーグ氏(写真)もこの12日に亡くなられました。 

恩年82歳 、ご冥福お祈り致します。 

ニューヨーク生活14

Monday, May 12th, 2008

フロリダ、パームビーチ出発の日、朝早くに僕はアパートを出ました。

Kさんとは空港で合流することになっていましたので、ニュージャージーにありますニューアーク国際空港に向かいました。

 

およそ6時間ぐらいのフライトだったでしょうか、あまり覚えていませんが目的地のパームビーチ国際空港に到着しました。

ニューヨークと違い、フロリダはさすがに温かいです。ニューヨークから着て来た上着を鞄につっこみ二人とも半袖姿になりました。

 

ギャラリーの人が車で空港まで迎えにきてくれる手はずになっていたので、ロビーを出てみるとダークグリーンのジャガーが我々を迎えに来てくれてました。 

 

色褪せたT−シャツにジーンズ、サンダル履きといういでたちで、 僕らを迎えに来てくれたのはジョンという男でした。

彼の本職はプロのサーファーです。冬場だけパームビーチでサーフィンをして、空いた時間をギャラリーの仕事をしているということらしく、冬以外はカリフォルニアでサーフィンをしているらしいのです。

なかなかのハンサムで今度マルボロのCMに出るのだと言っていました。

見るからに自由人といった感じで、彼の自由気ままな生活をなんとも羨ましいと思いましたが、よくよく考えてみると僕も彼に劣らずかなり自由で気ままな生活をしていたのでした。

自分のことは見えてないもので。

 

彼は気さくな男でよくしゃべります。僕らに多少気を使っているのかもしれませんが、車内は終始和やかな雰囲気で、我々をギャラリーのオーナー宅へと案内してくれました。

 

我々が到着するとギャラリーのオーナーが表まで出迎えてくれていました。

ギャラリーのオーナーの方は女性でした。

彼女は独身ですが、もう成人した娘さんが二人もいるらしく、小柄な外見からは知的な感じが伺え、そしてかなりのすご腕ビジネスウーマンと見ます。

その証拠に、いかにもセレブリティが住んでいそうな豪邸や別荘が建ち並んでいる地域に彼女の邸宅があるからです。

もちろん彼女の邸宅も他に劣らず素晴らしい。邸宅を取り囲むように花や緑に溢れた広い庭があり、大きな木には奇麗な色をした野生のインコの姿が何羽か見えました。また、所々にさりげなく有名作家のブロンズや石の彫刻が置いてあり、邸宅の裏は海につながる大きな運河が流れ、クルーザー用の船着き場がありました。

 

彼女は我々のために昼食を用意していてくれていました。ピカピカに磨かれたガラス製の大きなテーブルの上にセンスよく食器類がテーブルセッテイングされてありました。僕は少し緊張しながらも美味なるスモークサーモンなどをごちそうになり、それからコーヒーを飲みながらくつろいだ感じで仕事の打ち合わせをしたのでした。

 

とりあえず僕らはギャラリーが予約してくれたホテルにチェックインして、それがら再びジョンが運転する車に乗り、ギャラリーに行くことにしました。

 

ホテルからギャラリーまで車では10分ぐらいの距離で、大きな幹線道路沿いにギャラリーはありました。

ギャラリーの前には広い駐車場があり、幹線道路と駐車場との境には背の高いヤシの木が連なって植えてあり、まさに南国風情があります。

ギャラリーの他にインテリアショップ、マリン関係のアウトドアショップ、それに保険会社のオフィスなどがありました。

 

我々がパームビーチにいる間、作業の手伝いや細々とした雑用まで、ジョンが一挙に引き受けてくれるとこになり、我々に頼もしい助っ人が加わったことでいい仕事ができそうです。

早速僕らは彼に床に敷くビニールシートとガムテープ、掃除機、それにおやつにコーヒーの手配を頼んだのでした。

 

ギャラリーは5、60平米ぐらいの展示室とその奥に事務所と展示室と同じくらいの広さの作品保存用の倉庫部屋がありました。

展示室には大きなラウシェンバークのペインティングやクリストのドローイングなどメジャーな作家の作品とまだそれほどメジャーではないが、見て美しくしっかりとした手仕事をした若手の作品が展示されてありました。

そして部屋の中央の床に、これから我々が修復するソル・ルウィットの作品が分解されて床に置いてありました。

一辺が1m四方のパネルが13枚あり、それを組み立てると一辺が1m、高さ3mの立方体のオブジェになるという作品です。

 

作業はまず、パネル一枚一枚を丁寧に見て破損箇所に青色のマスキングテープで印を付けてから、各自個々のパネルの修理に取りかかります。

 

仕事が一段落してふと外の風景を見ると、もう日が沈もうとしていて、広い駐車場の向こうに並んであるヤシの木の黒いシルエットとピンク色から紫色の美しいグラデーションの空が見えました。

あまりの美しさに少しの間ぼーと眺めていると、Kさんがその空をバックに写真を撮ってほしいと言ってきたので、僕は鞄からカメラを取り出し構えると、Kさんはにっこり笑ってピースサインのポーズを決めた瞬間、ギャラリーのオーナーが車で僕らを夕食にと誘いに来てくれたのでした。

つづく